ACCURACY
精度について — 何をどこまで信じてよいか
このサイトのGTOトレーナーは自作ソルバーの計算結果をそのまま表示しています。「GTO」と名乗る以上、どういう計算で、どこに限界があるかを実測値つきで開示します。
計算方法
- ソルバーは CFR+(自己対戦の反復で均衡に収束するアルゴリズム)の自作実装です。実装の正しさは、解析解が知られている Kuhn Poker で理論値(-1/18)との一致を確認しています。
- ゲームが大きすぎてそのままでは解けないため、似た強さの手をまとめる「抽象化」(バケット化)をしています。まとめ方はエクイティ(期待ポット取得率)ベースで、スタッド系は相手の見せ札(デッドカード)、ハイロー系はポットの分割も織り込んでいます。
- ブラフを含む混合戦略は、プログラムしたものではなく均衡の性質として自然に現れたものです。
収束の実測値
抽象化したゲームの中での搾取可能度(exploitability: 完璧な相手にどれだけ搾取されるか。小さいほど均衡に近い)。トレーナーが読んでいる戦略表の実測値です。
- リミットホールデム: 29.2 mbb/hand(フロップ・ターン24バケット)
- オマハ hi-lo: 15.9 mbb/hand(24バケット)
- Razz: 21.9 mbb/hand(12バケット)
- セブンカードスタッド: 38.6 mbb/hand(12バケット)
- スタッド hi-lo: 38.7 mbb/hand(12バケット)
- ホールデムのリバー: 12バケット・直前ストリートのみ記憶の専用ソルブ(22.8 mbb)
いちばん大事な限界: 抽象化の粗さ
上の数字は「抽象化したゲームの中で」の収束度です。実カードの完全なゲームに対する距離は、抽象化の粗さで決まり、これより大きくなります。私たちの実測(オマハ hi-lo、相手側の解像度を固定して測定)では:
- 40バケット: 574 mbb/hand
- 100バケット: 296 mbb/hand
- 200バケット: 170 mbb/hand(バケット2倍ごとに約0.57倍)
トレーナーの解像度(12〜24バケット)はこの表より粗いので、実ゲームに対する距離はさらに大きいと考えるべきです。参考として、NLH用の商用ツール(GTO Wizard等)はカード抽象化をほぼ使わず、ポットの0.1〜0.3%程度まで詰めています。本トレーナーはその精度ではありません。「この局面はベット寄りか・どのくらいの頻度で混ぜるか」という傾向を学ぶための学習用近似です。
MDF(最低防御頻度)はどこまで守れているか
ポーカーには「相手のベットに対して、最低これだけは降りずに受けないとブラフが自動的に儲かってしまう」という基準(MDF)があります。このトレーナーのリバー(ポット4.5SB・ベット2SB)なら、理論値は防御69.2%(フォールドは30.8%まで)、ベット側の適正なブラフ比は23.5%です。
実際の戦略表が守れているかを測りました。各ハンドをその局面に到達する確率で重み付けして、フォールド率を集計した結果(1ボードあたり約205ハンド):
- K♦9♠4♥2♣7♦: フォールド 30.2%(理論値30.8%とほぼ一致)
- Q♠J♥8♦3♣6♠: フォールド 19.7%(受け過ぎ)
- T♥6♣5♦2♠8♥: フォールド 37.8%(降り過ぎ)
- A♥7♦2♣5♠9♥: フォールド 53.0%(降り過ぎ)
MDFの発想そのものは、均衡の性質として現れています。レンジは価格に応じてポラライズし(最も弱い手でブラフし、ショーダウン価値のある中間の手はチェックする)、受け手はポットオッズに従って降ります。K♦9♠のボードで理論値をほぼ的中させているのは偶然ではありません。
ただし総量としては、ボードによって±20ポイント程度ぶれます。原因は解像度です。戦略はバケット単位の階段関数なので、総防御率を69.2%に合わせ込む分解能がありません。実際、A♥7♦のボードではベット側のブラフ比が25.6%(ほぼ適正)なのに受け手が53%降りており、この局面では相手のブラフが儲かる状態になっています。
したがって「この手は降りる側か・受ける側か」という傾向は学べますが、「このボードでは正確に何%防御すべきか」という数値としては信用しないでください。
そのほかの既知の限界
- 判定は頻度ベースです(最頻アクション=正解、15%以上混ぜる手=許容)。厳密なEV損失での採点ではありません。
- ホールデムは BTN vs BB のシングルレイズポット1スポットのみ。3ベットポットや他ポジションは未収録です。
- スタッド系の5thストリート以降、オマハのリバーは未収録です。
- リバーは12バケットと粗いため、混合戦略が境界のバケットに集中する傾向があります(同じバケット内の手は同じ戦略になります)。また、まれにしか到達しない経路(ターンとリバーの強さの組み合わせが珍しいケース)の頻度は、学習データが薄くノイズを含むことがあります。
- オマハのプリフロップは未モデル化で、両者ランダムな4枚から始まります。
→ トレーナーに戻る